お会いしたことのない持ち主様から、教わったこと

このところ、朝晩めっきり冷え込むようになりましたね。

先日、ある物件の整理作業を終えて、なんとも言えない気持ちになりました。

その持ち主様には、お会いしたことがありません。関わらせていただいた時には、すでにお亡くなりになっていました。

でも、不思議なことに「お会いしてみたかった」としみじみ思ったのです。

――

物で埋め尽くされた家

その家の中は、入ることも大変なくらい、物で埋め尽くされていました。

最初は正直、「これは…大変な作業になりそうだ」と思いました。

でも、一つひとつ手に取ってみて、私は気づいたのです。

いわゆる『ゴミ』は、なかったのです。

手作りの人形。
観た映画のパンフレット。
美術館のチケット。

それらはすべて、何重にも透明な袋に入っていました。

一つひとつ、大切に、大切に保管されていたのです。

その分、分別するのは確かに大変でした。でも、作業を進めるうちに持ち主様が「少女のような感性」を持って生きてこられた方だということが、ひしひしと伝わってきました。

映画を観て、心が動いた。
美術館で、美しいものに触れた。
そして、自分の手で何かを作り上げた。

一つひとつの物に、「その時の気持ち」が込められていたのだと思います。

作業をしながら、私は心の中でつぶやいていました。

「ああ、この方にお会いしてみたかったな」と。

――

妹様の想い

持ち主様には、お子様がいらっしゃいませんでした。

私たちは、手作りの品々を写真に撮り、妹様にお見せして、どうされるかを確認しました。

「姉の作ったものですから…捨てるのは、躊躇いがあります。でも、私も高齢なので、子どもに迷惑をかけたくないんです。申し訳ないのですが、処分してください」

そうおっしゃる妹様の声には、寂しさと、でもどこか安堵のような、複雑な想いが込められていました。

大切な姉が残したもの。
でも、自分が受け取ることで、今度は自分の子どもに負担をかけてしまう。

そのジレンマ。
その切なさ。

よく分かります。

――

物たちの行く末

一緒に作業した人が、何点か持ち帰り、今も飾っているとのこと。

それを聞いて、少しだけほっとしました。

持ち主様の作った物が、新しい場所で、また誰かに愛されている。

そのことが、せめてもの救いのように思えました。

でも、残りの膨大な物たちとは「さよなら」を言って、処分することになりました。

作業をしながら、私は思いました。

どんなに思いを込めて作った物でも、
どんなに大切にしてきた思い出の品でも、
人生の最後には、持っていけない。

これは、誰にとっても同じことなんだと。

どれほど愛した物も、
どれほど心を込めた作品も、
最後には、誰かの手に委ねるしかない。

それが、人生の終わりに訪れる現実なのです。

――

見届けることの大切さ

だからこそ、大切なのは

自分の意思で、その物たちの行く末をしっかり見届けてあげること

なのではないかと思いました。

持ち主様は、もしかしたら「いつか整理しなきゃ」と思いながらも、その時を迎えられなかったのかもしれません。

でも、もし生前に
「この人形は○○さんに」
「この作品は寄付して」
と決めることができていたら、

物たちも、もっと違う形で次の人生を歩めたかもしれない。

そして何より、持ち主様ご自身が「ちゃんと見送れた」という安心感を持てたのではないかと思うのです。

大切な物だからこそ、自分で行き先を決めてあげる。
思い出の品だからこそ、自分の手で「さよなら」を言ってあげる。

それが、物たちへの最後の優しさなのかもしれません。

――

あなたの大切な物たちは?

皆さんはどうでしょうか?

今、大切にしている物たちの「その後」について、考えたことはありますか?

別に、今すぐ処分しなきゃいけないというわけではありません。

でも、
「この物は、最後どうしたいか」
「誰かに譲りたいか、それとも自分で見送りたいか」

そんなことを、ほんの少しだけ考えてみるのも良いかもしれません。

私自身も、買い物が大好きで、片付けが苦手です。

だからこそ、この持ち主様の残された物たちを前にして、改めて考えさせられました。

物を大切にすることと、
物に執着しすぎないこと。

物を愛することと、
物を手放す勇気を持つこと。

そのバランスを、生きている間に少しずつ整えていく。

それが、自分にとっても、残される家族にとっても、そして物たちにとっても、優しい選択になるのだと思います。

――

最後に

お会いしたことのない持ち主様。

でも、残された物たちが、あなたの人生を、あなたの感性を、私たちに伝えてくれました。

少女のような心で美しいものを愛し、手を動かして何かを生み出し、それを大切に保管してきたあなた。

その想いは、確かに届きました。

そして今、あなたが作った人形は、新しい場所で、また誰かに微笑みかけています。

物は持っていけない。
でも、想いは確かに、残るのだと思います。

あなたの大切な物たちにも、ちゃんと「見送り」をしてあげられますように。

そして、それが「安心できる人生の終い方」につながりますように。

もし、「物の整理、どうしたらいいかわからない」「家族に負担をかけたくない」そんなお悩みがありましたら、まずはお気軽にご相談ください。

一緒に考えていきましょう。​​​​​​​​​​​​​​​​