『なんとも言えない気持ちだなぁ』
と感じています。
先日、仲介業者として関わらせていただいた物件の引き渡しが終わりました。
安堵と共に、私の中に『寂しさ』や『哀しみ』のような?なんとも表現し難い感情が湧き上がりました。
――あれは、今から三年前のこと。
一本の電話から、この物語は始まりました。
「実家をどうしていいかわからないんです」
そう、ご相談をくださったのは、男性のお客様でした。
現地を訪れると、そこには木造3階建て、延べ床面積150平方メートルを超える立派なお家が佇んでいました。
しかし、中に足を踏み入れた瞬間、思わず息を呑みました。
溢れかえった荷物、散乱するお酒の瓶、そして家全体を包み込むタバコの匂い――。
床はほとんど見えず、足の踏み場もない状態でした。
片付けだけで、実に半月以上。
ようやく家の姿が現れたとき、その大きさと重厚さに、改めて「この家には、たくさんの時間が流れていたんだな」と感じました。
築年数は平成の後半。
私たちが扱う物件の中では比較的新しい部類でした。
「せっかくだから、リフォームして売りたい」
そうおっしゃるお客様の想いを受けて、リフォーム会社の方と一緒に現地を見て回りました。
けれど現実は、厳しいものでした。
外壁の剥がれ、天窓からの雨漏り、そして床の一部が抜け落ちている――。
「この状態だと、外壁も水回りも全部やり直しですね」
出てきた見積額は、少なくとも一千万円。
お客様のご予算をはるかに超える金額でした。
「そこまでかけるのは、難しいですね……」
そう呟くお客様の声には、寂しさが滲んでいました。
それでも、この家を手放すしかない。
私たちは「古屋付き土地」として販売する方向に切り替えることを提案しました。
しかし、ここからが本当の始まりでした。
この家は、お父様が土地を単独所有し、建物はお父様と息子様の共有名義。
ところが――お父様が亡くなって、すでに十年近く。
相続の手続きが、まだ行われていなかったのです。
さらに、お母様は施設に入所中で、すでに後見人がついていました。
遠方に暮らすお姉様との連絡もなかなか取れず、話は一筋縄ではいきません。
それでも、少しずつ一歩ずつ、前へ。
後見人の方と連携し、まずは相続の整理を進めました。
同時に、家を少しでも良い条件で売れるように――
土地家屋調査士さんに依頼して、測量、畑の宅地転用、三筆に分かれていた土地の合筆を進めていきました。
費用は、売買代金からの精算でご了承いただきました。
すべてが整ったとき、ようやく一枚の図面が完成。
その図面を手に、私は思いました。
――この家にも、もう一度、新しい物語を始めてほしい。
そして、買ってくれる人を探す旅が、始まったのです。

