メールの通知音が鳴り、差出人のお名前を見た瞬間、思わず身構えてしまいました。
その方は、少し前に空き家の売却をお手伝いさせていただいた持ち主様のご親戚の方でした。
「もしかして、何か問題があったのでは…」
正直なところ、不安な気持ちでいっぱいになりました。
複雑な事情を抱えた物件との出会い
持ち主様は、配偶者様を見送られた後、お子様がいらっしゃらない方でした。
数年前に施設に入所されてからは、遠方にお住まいのご親戚の方が、時々いらっしゃって管理されていたそうです。
初めて家屋内に入らせていただいた時、ご親戚の方が立ち会ってくださいました。
きちんと整理されてはいましたが、物の多さに圧倒される感じでした。
持ち主様は洋裁関係のお仕事を家でされていたそうで、ミシンやたくさんの道具類が大切に置かれていました。
2階にそのお仕事部屋があるためか、わずかに家が傾いている場所もありました。
見えてきた厳しい現実
通常であれば、中の物を片付けて建物を解体し、更地にした方が価値がつくような状況でした。
ところが、調べてみると思わぬ事実が判明しました。
家の前の道路は充分な広さがあるにも関わらず、公道からの入り口が、わずかに基準を満たしていなかったのです。
つまり――
家を解体してしまうと、再建築ができない可能性がほぼ100%に近いということでした。
色々な業者さんに打診しましたが、片付け費用を引くとマイナスという評価ばかり。
当社で買取る場合は、もう少し高くできるので検討しましたが、エリア的に離れているため、それも難しいという結論に達しました。
少しずつ、前へ
それでも、諦めませんでした。
以前からお付き合いのある、空き家の投資家様のグループにお声かけさせていただき、何名かに見に来ていただきました。
その中で、わずかにではありますが、プラスで売却できそうな見込みが立ちました。
持ち主様の後見人の方に、その事をお伝えしたところ、こうおっしゃってくださいました。
「このまま空き家にしておくよりも、きれいになって手を離れるのであれば、ご本人や今後相続される方にも良いと思います」
裁判所にも許可を仰いでいただき、売却が決まりました。
モノの命もつなぐ
家の中の物も、少しでも処分しないで、欲しい人の手に渡したいという思いがありました。
声をかけたところ、カフェを営む友人が見に来て、引き取ってくれた物がありました。
当社が買取させていただいた物もあります。
精一杯、少しでも高くと努力はしたつもりでしたが、私の中には「もっとなんとかならなかったのか?」という思いもありました。
自分を不甲斐なく思う気持ちもありました。
予想外のメール
そんな状況でしたので、ご親戚の方からのメールにドキッとしたのです。
恐る恐る、中を読んでみると――
そこには、お世話になったという感謝の気持ちが綴られていました。
以前から、残置物も多いのでかなりのマイナスでの売却を覚悟されていたそうです。
それがわずかでもプラスになったので、驚きと喜びのお気持ちだったとのこと。
予想外のお言葉に、私の方が感謝の気持ちでいっぱいになりました。
最後に
私にとって、こういうお客様からのお言葉が何よりの喜びです。
数字だけでは測れない不動産の価値があります。
たとえ売却価格がわずかでも、お客様が安心して次のステップへ進めること。
大切に使われてきた物が、新しい持ち主のもとで活かされること。
思い出の詰まった家を、良い形で手放せること。
それが、私たちが目指す「ご縁を紡ぐ」ということなのだと、改めて感じました。
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「もしかして⁉️クレームかもしれない❗️」
そう思って開いたメールが、こんなに温かい言葉に満ちていたことに、心から感謝しています。
空き家のこと、相続のこと、どんな小さなことでも、まずはお気軽にご相談ください。
お客様の「これから」を、私たちと一緒に考えてみませんか?
